児童養護施設とは

児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設。 (児童福祉法第41条)

<対象児の具体例>
・父母等から虐待を受けている児童
・父母が養育を放棄している児童
・父母が死亡、行方不明となっている児童

 

Q:全国に何施設?何人?
A:全国に615施設。約3万人の子どもたちが施設で生活しています。

 

Q:一番の入所理由は?
A:虐待です。

 

国の仕組み(社会的養護)と児童養護施設

家庭から児童相談所に一時保護された子どもが、虐待などで養護を要すると判断された場合に、家の代わりに生活する場所が児童養護施設です。

児童養護施設では子ども5.5人あたり1人の職員が配置されるよう定められています。

 

児童養護施設の現状

1.たくさんの人との共同生活

子ども達はひとつ屋根の下、職員や子ども達と共同生活をしています。
多い施設では一つの生活空間に子どもが20人以上いることもあり、
普通の子どもが当たり前のように持つ、プライベートな空間を持つことが叶わないこともあります。

 

2.喪失感ゆえの試し行動

施設に来るまでに子ども達は親や家を、一時的にでも失っています。
それ故に周囲の人を信じることが難しい子もいるようです。
そうした子どもたちは、あえて怒られるような行動をとることで、周囲の人を試すのです。
「本当にこの人は自分から離れないかな?」と試し行動をすることで、問題児だと決めつけられてしまうこともあります。

 

3.資源不足による我慢


施設に十分なお金や職員がないために、子ども達は我慢をすることが当たり前になっていることも。
公園にいくこと、おもちゃを買うこと、外食をすること…それが豪華なものでなかったとしても、同伴できる職員がいないから、あなただけに買うわけに行かないからといろんな理由で我慢をしているのが現状です。
一方で、好意ある法人や個人から、寄付を受けることもたくさんあります。
しかしそれらは子どもたちが望んでいることではない場合もあり、子ども達は「ふーん」とその好意を受け流してしまうことも。

 

4.施設職員の入れ替わり

勤務形態も特殊で勤務内容も心身ともに負荷のかかる仕事であることから、職員が数年で離職してしまうことも多いのが現状です。
担当の職員が退職する度に、子ども達は親がいなくなった感覚を感じます。
これは、子ども達にとっては信頼していればいるほど、悲しい体験となります。
代わりに新しい職員が来ても馴染めないこともあり、本来子ども達にとって安心できる場所である生活空間が、不安定なものとなっている場合があるのです。

 

5.生活支援で多忙・メンタルケアまで手が回らない(インケア不足)

職員1人で家事をこなしながら子ども6人を見るというのはただでさえ忙しいものですが、子ども達との日常はトラブルがつきもの。勉強がわからない、喧嘩、万引き、など。そんな中で、どうしても子どもの「ちょっと話聞いて」にゆっくり向き合う時間が取れない。これは児童養護施設が生活のための施設として想定されていることが根底にあると考えます。職員が日常の中で、子ども達のメンタルケアをするという構造にはなっていないように感じます。

 

6.アフターケア不足

児童養護施設を退所した後に、子どもたちを守るような国の仕組みはありません。高校を卒業するまでは施設で暮らし、色々なことが守られていた子どもたちは、高校を卒業すると同時にサポートのネットがなくなってしまいます。少なからず、家賃が払えずホームレスになったり、犯罪を犯してしまう子どもたちもいます。そんなとき、施設の職員や親に頼る訳にもいかず、途方にくれてしまうのです。

 

7.「施設」という偏見や差別

「児童養護施設」という言葉は一般にあまり知られていないために、様々なイメージを想起させます。その結果、自分が児童養護施設にいるということを恥ずかしく思ったり、児童養護施設にいること(いたこと)を隠して生活をしている子も多くいるようです。また、施設退所後に就職活動をする時、家を借りる時もそれらの偏見は付いて回ります。

 

 

詳しくは以下の資料をご参照ください。

児童養護施設等について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000166119.pdf